先祖調査5 ~ところで母方~

 さて、これまで父方の先祖について書いてきたが、今回は母方先祖の調査状況について、ちょいと書いてみたい。母方の先祖についてはまだ調査は殆ど進んでいない。しかし、父方の森元家は謎の家系であり、ほぼゼロからの調査であることに対し、母は本家出身であったこともあり、最初から多少の予備知識は持ち合わせている。

 

 母は旧姓を松浦といい、実家は奈良の五條で、昔は材木商を営んでいた。かなり裕福であったようで、本業の商売に加え、沢山の土地持ちであったようだ。明治34年生まれの祖母が若き日々が最盛期だったようで、祖母には沢山の逸話がある。

・遊びにいくときはいつも髪結いさんのセットがあった(お葬式に来た祖母の友達談)。

・沢山の丁稚がいた。そして最も出来のいい丁稚を選び、婿にした(=後の祖父)。

・祖母が修学旅行に行く際、お付きが同行した。ちなみにそのお付きとは丁稚時代の祖父。

 

などなど。しかし華やかな生活は、奴らが日本に上陸したときに終わった。GHQである。戦後、奴らの農地改革により、持っていた土地は全て政府にタダ同然で買い上げられて、材木商は廃業となり、苦難の戦後復興を歩むこととなったのである。ちなみに母は、小学生のころ、梅津かずお先生と同級生だったらしい。まことちゃんに登場する「マッチョメマン」は、五條の菓子メーカー「松長製菓」から由来していることは我々世代なら誰もが知るところであろう。

 

 だが、祖母より前のこととなると、殆ど情報が無い。先日、叔母(母の姉)と話す機会があったので、松浦家はいつから材木商を営んでいたのか、聞いてみた。だが「そんなん知らんわ、安吉さんていう人がえらい儲けてはったらしいけどなぁ」であった。知らないのか。う~ん、でも意外とそんなもんかも知れない。本家だからといって、先祖のことを何でも知っているわけではないのだ。ところで、安吉様という方、母の戸籍に名前だけ登場する。祖母の祖父である。

 

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母方の戸籍。祖母の祖父として名前だけ記載されているのである。

 さて、安吉様については、奈良県立図書館で興味深い資料を見付けることが出来た。「實業重寶」といい、大正6年奈良県下の商人一覧のようなものである。安吉様は本当に「えらい儲けてはった」のか?勝手に分析してみた。

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松浦安吉様、大正6年に大活躍!

まず、左上に書かれている「十八、000」であるが、これは直接国税として18円納付していますよ、というアピールと思われる。直接国税とは、読んで字のごとく、国に直接納付する税金であり、具体的には所得税と地租(現在の固定資産税)である。実際には直接国税による国の収入は、殆どが地租によるものであり、概ね、直接国税≒地租と思ってよい。大正6年当時、直接国税を十円以上納めている者のみに選挙権があり、これは全日本国民の1%程度であったらしい。即ち、直接国税十円以上というのは、ステータスであり、商売人にとっては、「信頼出来るお店ですよ~」という根拠だったのではないか。安吉様は十八円も納付していたので全力でアピールしているのである。

 

当時の十八円は、概ね現在では300,000円程度であり、当時の地租は地価の2.5%である。ということは、現在でいうと持っていた土地は50,000,000円程度ということに。ありゃ、まぁ凄いけど、大地主という程ではないかな。う~ん、計算が間違っているのだろうか。正しい計算方法を知っている方がいたら、是非とも教えて頂きたい。ならば、ちょっと強引ではあるが、全日本国民の1%というところに着目してみる。今の世の中で、国民の1%というのは、年収20,000,000円以上の人達らしい。安吉様は十八円と、倍近くの金額を納付していたわけなので、年収40,000,000円といったところだろうか。うわ!こりゃすごいね。叔母の言う通り、材木商・安吉様は「えらい儲けてはった」のである!

 

 今回、少なくとも大正6年には松浦家では材木商を営んでいたことが分かった。が、いつからなのかは、まだ分かっていない。今後も調査を進め、新たなことが分かったらまたupしたい。

 

 ところで、この「實業重寶」はなかなか面白かった。我が町、三郷町の商人についてもしっかりと記載されていた。

 

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莫大小とはメリヤスのことである

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今も昔も信貴山は寅推しだったらしい

ちなみにこの「實業重寶」、奈良県立図書館に、松浦安吉という五條の材木商について質問したところ、わざわざ蔵書からこの資料を探し出してくれたのである!奈良県立図書館もまた神対応だったというお話。